【コラム】HBAサマーセール2022レポート(前編)

こんにちは、代表の会田です。

先日、2022年度募集馬3頭を発表させて頂きましたが、

毎年恒例のサマーセールに参戦して、どういう経緯で募集馬を落札したかを記したレポートをお届けします。

まずはじめに、今年の選馬のテーマとして、以下のルールを決めました。

1.「3歳ダート三冠」「2・3歳短距離路線の整備」を意識した選馬をする

2024年より大井競馬でのダートの三冠競走がJpnI化され、兵庫CSを頂点とした2・3歳短距離路線の整備が行われる事が発表になりましたが、今年、セリに出ている2021年産駒は、そのレースに出走出来る最初の世代となります。

2021年産は既に満口になっている預託繁殖の牡馬がいるので、例年通り世代3頭としたら
上述の路線で打倒中央を目指せる牡馬を1頭、牝馬1頭をこのセリで仕入れる事を考えていました。

2.募集価格で1千万円を超えないようにする

昨年も同じ事を書きましたが、自分は地方競馬でペイするのはどんなに高くても馬代金1千万円ぐらいだと考えています。

ちょっとこれ以上だと走らなかった場合会員さんに申し訳ないですし、高い馬で打倒中央を目指しても面白くないかなというのもあります。やっぱり人々が魅了されるのはオグリキャップのような下剋上ですからね。

ただ、募集価格は1歳12月までの育成費と2歳4月までの保険料(およそ110万円)、クラブの利ざやを含めると
落札価格ベースで700万ぐらいまでに抑えなければならず、
昨今の馬価格の高騰からすると色々な事を妥協しなければならず非常に難しくなっています。

特に、人気のシニスターミニスター、ホッコータルマエ、パイロ、エスポワールシチー産駒などは
前述のダート3冠創設に加え、南関東競馬を始めとした各地方競馬の高額な助成金もあるため、
牡馬でサイズがそこそこある馬は良い馬は当たり前のように1000万円を超えていきますから、
牝馬ならともかく牡馬でこのあたりの種牡馬から打倒中央を目指す素材を見つけるのは中々難しい。

ただこれまでの経験からすると5日間、せり会場に張り付いていると相場に隙が生じ、稀に「この馬がこんな値段で?」という事があります。

特に夜の時間帯でみんなが帰ってしまう遅い番号の上場馬や、中央の調教師が追い切りや投票などで帰ってしまう事が多い水曜日以降が狙い目でしょう。

昨年はセリの合間に門別競馬場にオーナーズ共有馬の出走の立ち合いに行ったりしていたのですが、
今回はチャンスを狙って、5日間朝から晩までセリ場に張り付いてチャンスを待つ事にしました。


初日

まず初日。朝の5時前に東京自宅を出発し朝一の飛行機に乗って8時過ぎに新千歳空港到着。
そこからレンタカーを2時間運転して10時過ぎにセリ場に到着し、田中淳司先生らと合流しました。

今回のセリは、どちらかというと3・4・5日目あたりにカタログを見て欲しいなという馬が集中しており
どうしても欲しいという馬がいなかったので、一定のレベルにある馬が安く買えたらというスタンスで
一斉展示の後半を見た後、ダート系の種牡馬の産駒を出してリストアップ後、
4~500万の予算で適当に競ったりしていたのですが、結局この予算で落とせる馬はいませんでした。

月曜日は中央競馬の全休日で、中央の関係者が多く来場される事から、どうしても高くなってしまうんですよね。

しかしこの日は馬が例年よりも高く次々と売れていって、馬業界は円高や株安は関係なく上がるな~と指をくわえながら見ていました。

最後の211のパイロを競った後会場を後にし、先生や仲間と富川で食事をして、次の日に備えます。


2日目

そして2日目。この日は雨で一部見れていない馬がいたため、一斉展示が終わった後先生と合流して、
お互い気になったダート系の種牡馬をピックアップして順番に出して見て回ります。

その中で先生の目に留まったのが392の「ビアンカリボンの21」。

シニスターミニスターの牡馬で、現在の馬体重が452kgと馬格がある馬だったので、軽く1千万を超えていきそう。
下手したら2千万以上も有り得る。

「これは僕の予算では買えないですよ」と言ったら、「左前の球節に骨片があるので安く買えないかな」と。

骨片の部分は外観からも僅かに見えるのですが、触診や歩様は問題なし。むしろ、歩かせて見ると弾力性があるというか、力強さだけが際立つ印象でした。

有名な獣医であるエクワインの瀬瀬先生・福田先生にレポジトリーも診てもらったのですが、関節部ではないので問題ない、摘出手術をしなくてもそのままで大丈夫との見解で、じゃあ安かったら行きましょうという事に。でもこの時は半分買えないだろうなと思っていました。

そして当該馬のセリの時間になると、何とお代は500万で主取りに。

結局一声も掛からなかったので、先生と「これ再上場にすれば安く買えるのでは?」ということになり。
念のため再度レポジトリーを確認してもらうも、やはり大丈夫とのことで、馬房に行って400万で再上場出来ないかと交渉に。すると

「種付け料350万なのでもうちょっと何とかならないか」と言われてしまい(それはそう)、
450万でOKをもらったので、その値段で、無事落札出来ました。

セリに出すまでの育成費を考えるとちょっとタダみたいな値段で申し訳なかったです。

それにしてもあまりのアウトレット価格だったためか、購買した後、いろんな人に「会田さんが落とした馬、何であんなに安かったの?」「あの馬レポジトリ見たかい?」と声を掛けられ、
やっぱり気になっているけど骨片が気になって落とさなかった人が多かったんだなあと。笑

まあマトモなら1千万は軽く超えていくはずですし、誰も声上げなかったという事はリスクは0ではないのかなと思うのですが、
こういうのを何とかするのが地方競馬の仕事かなと思いますし、
馬自体は中央に入厩する馬と遜色ないデキですから、打倒中央を目指すにはうってつけの素材かなと思いました。

ちなみにこの馬を落札した瞬間は、ちょうど門別競馬場でオーナーズ共有のセイヴィアズグリンが出走する時間帯でした。
共有馬主様もセリついでに応援に来られていたようで、あちらに立ち会う事も考えていたのですが、落札のチャンスを逃さず、会場にいる事が出来て良かったです。

という訳でひとまず1頭落とす事が出来て安心しましたが、この後が案外キツかった。

後半に続きます。