【コラム】HBAセプテンバーセール2025レポート
こんばんは、代表の会田です。遅筆なもので早割締切間際のタイミングになってしまいましたが、セプテンバーセールのレポートをお届けいたします。
セプテンバーセールの雑感
小柄な牝馬が多い!
さて、セプテンバーセールですがサマーセールとはガラッと馬質が変わり、一言で言うと小柄な牝馬が多い印象でした。
近年、セレクションセール・サマーセールに上場馬が集まる傾向にあり、セレクションはこれまで2日間だったのが3日間、サマーは昨年から6日間のロングラン開催になっています。
なぜ7月・8月のセリに上場馬が集まるかというと、生産者の視点で言うと早い時期のセリの方が高く売れるからという事です。
今年の例で言うと、セレクション1頭あたりの平均取引価格は308頭で1864万円、サマーは1079頭で710万円に対して
セプテンバーは466万円(価格は全て税別)とかなり落ち込んでいる事が分かり、
販売者としてはなるべく早い時期のセリに出したいところでしょう。
なのでセプテンバーに出てくる馬というのは、夏のセリの時点ではまだ成長がいまいちだった馬の
出品時期を伸ばして成長を促しているという理解であれば「小柄な牝馬が多い」というのも納得できます。
ただ、昨年まではサマーとセプテンバーの間が1ヶ月くらいあったのに、今年は特に中3週だったので、
そのくらいの違いだとやっぱり良い馬はサマーへとなってしまうので上場馬の質の低下も致し方ないところ。
実際、北海道の1歳セリはどのセールも右肩上がりに売り上げを伸ばしていましたが、
本セールの平均価格は前年より明らかに低下していました。
また馬主の視点からすると、早い時期のセリの方が育成場や厩舎の預託枠を確保しやすいという点も挙げられます。
良い厩舎や育成場は、この時期に問い合わせても預託枠が埋まってしまっている事がほとんど。
北海道市場ではあまりセレクション・サマーに馬が集まりすぎないよう
セプテンバーセール・オータムセールへの出品馬の分散を促すような書類を作って、
各牧場に送ったりしていたようですが、このような事情があるため、中々難しいところです。
良い馬が目立ってしまう
さて当クラブではここまで、自家生産・庭先取引・セリ合わせて牡馬4頭、牝馬5頭を揃えていたので、今回のセリでは牡馬を中心に後3頭ぐらい仕入れたいなと考えていました。
ただ、サマーはあれだけ頭数がいるので需要が分散して、時に良い馬を掘り出し物みたいな価格で買う事が出来る事があるのですが、
セプテンバーでは小柄な牝馬ばっかりの中まともな牡馬がいると逆に目立って需要が集中し、お買い得な値段で買う事が出来ませんでした。
1日目・2日目と何度も手を挙げたのに全く落とす事が出来ず、非常にストレスの溜まるセリになってしまいました。
そこで思い出したのが昨年ロジータサンライズを買った時の事。当時のコラムはこちら
3日目の最後の方、セレクションセール主取りの馬が上場される頃になると、明らかにお客さんが帰ってしまっていた事を思い出して、
そこに全てを賭ける事にしました。
僅か2時間の間に4頭落札!!
そして、何も落とせないままセプテンバーの終盤を迎えると、読み通り明らかに人が少なくなっていて、
トウカイポプリを落としたあたりから「これは行ける!」と急にヤル気を出して、僅か2時間のうちに一挙4頭を落札。
ちょうどセリの最中に門別で出走していたレノヴァティオの応援についでに、
セプテンバーで私が落とすところを見たいと言ってセリに来場された会員さんがいたのですが、
その会員さんも結局今年は買わないのかなと思って途中で帰ってしまったらしく
「まさかあの後4頭も落とされるとは思わなかった」と非常にびっくりされていました笑
しかしここまでのラインナップで牡5頭に対して牝8頭と牝馬が多めになってしまったので、
道営に牝馬ばかりたくさん入れても路線が被ってしまうかなと思い
今回、新たな試みとして岩手・高知にも振り分けてみました。
各馬の解説
さて、各馬の落札を時系列順に振り返っていきたいと思います。
トウカイポプリの2024
デリケートアーチの2024は、主取りからの再上場で落札だったので、セプテンバーセールで最初に買ったのは本馬です。
母トウカイポプリはトウカイテイオーを輩出したトウカイナチュラルの牝系で、自身はJRAのダート戦を2勝。産駒はJRA3勝馬のトウカイパシオンとトウカイファクター、JRA2勝のトウカイパシオンなどJRA勝ち馬を4頭輩出している点に着目。
馬格もあるし、レポジトリーも特に問題なかったので、自分の中では「500万やそこらでは買えないだろう」と思っていたのですが、まさかの300万円台で落札。
母19歳時産駒とか、管囲がやや細めというので嫌われたのかもしれませんが、当クラブでは母24歳時産駒のステイクラッシーが活躍していますし、砂の深い高知だったら故障も少ないでしょう。嫌われたというよりは恐らくセリの終盤でお客さんも少なくなっていて狙っている人が少なかったのだと思われます。
そして、本馬を購入した時点では気づかなかったのですが、現3歳の本馬の全姉トウカイクレオスは中央未勝利から高知・打越厩舎に移籍すると3連勝を含む4勝2着1回でほぼ無敵の快進撃。この活躍を見て打越調教師に本馬の預託を打診したところ、快諾を頂きました。血統的に高知適性がある事が分かりましたし、本馬は姉より一回り大きいので、かなり上まで行ける可能性を秘めていると思います。プリフロオールインで高知三冠を制覇、シンメデージーでダートグレードに挑み、毎年全国リーディングを獲っている打越先生がどう育て上げるか、手腕にも期待しています。

デリケートアーチの2024
さて本馬の母は社台ファーム生産馬で、一旦社台ファームで繁殖入りした後レイクヴィラファームに移動。その後の産駒はセレクトセールに出ており、2020年産のポッドウィズダムはセレクトセールで6600万円、2023年産のマーゴットデイズは1980万円の高額で取引されています。
本馬は繁殖牝馬が青森に移動してから初の産駒。私は母馬の産駒がセレクトセールで取引されていたのを知っていたのですが、その子が250万円で主取りになったという点に着目、そこから候補に挙がりました。父カレンブラックヒルがあまり人気が無いのかもしれまんが、一緒に見ていた田中淳司先生も朝の展示で見て推してくれていた馬ですし、生産牧場が変わっただけでそんなに安くなるかあ?と。
先のトウカイポプリを落とした後に再上場を申込に行こうとしたら、既に200万で申し込んであったので一回だけ手を挙げて220万円で買えたら落とそうくらいの気持ちで声を掛けてみると見事その金額で落札出来ました。やった!!
本馬は青森産という事、芝ダート両方行けそうという事から東北でデビューさせたいと思い、ジョッキー時代メイセイオペラでフェブラリーSを制し打倒中央を果たしたレジェンド・菅原勲厩舎に預託する事になりました。昨年・一昨年とリーディングを獲っており、近年調教師としても目覚ましい活躍をしています。
その後、全くの偶然で半姉のグランシャットが中央未勝利からたまたま同じ菅原勲厩舎に入り、盛岡競馬の転入緒戦を快勝。岩手への血統的適性を証明しています。
半姉は中央に戻れる素質がある馬だと話していて、「姉妹だとは知らなかったですが、言われてみれば本馬に似ているところがありますね」と菅原勲調教師。
グランシャットはレイクヴィラF産でセレクトセール1430万円の馬ですが、本馬の募集価格は1歳12月の育成費込みで半値以下と非常にお買い得となっています。ぜひご検討頂ければと思います。

ルソンデュレーヴの2024
さて、この馬から先はセレクションセールに主取りになった馬の再出品馬になります。
本馬の父サンダースノーはアイルランド生産・イギリスの調教馬で現4歳が初年度産駒。2016年のクリテリウムアンテルナシオナル、2017年のジャンプラ賞、2018年・2019年のドバイワールドカップ連覇の実績があります。現役時代は芝のGIも2つ勝っていますが、ダート寄りの仔を出す傾向にあり、産駒はナルカミ(’25ジャパンダートクラシック、不来方賞)とテンカジョウ(’24マリーンC、’25兵庫女王盃、エンプレス盃)の2頭のダートグレード勝ち馬を輩出。その他ベルグラシアス(’25東京プリンセス賞)・ハーフブルー(’25優駿スプリント)の南関重賞勝ち馬を輩出。
母ルソンデュレーヴはノーザンファーム出身、シルクレーシング所属の良血馬でJRA1勝。母父キングカメハメハは近年ダートのブルードメアサイアーランキング首位を堅持をキープしており、ブラックタイプを見ると近親にロジユニヴァース(日本ダービー)、パンジャタワー(NHKマイルC)、ソングライン(安田記念2回、ヴィクトリアマイル)、ディアドラ(秋華賞、ナッソーS)などがいます。
本馬はさすがセレクションセールの主取馬というだけあって近親にGI馬がズラリと並び、また同セールの厳格な馬体審査に合格している事から480kgを超える好馬体です。
この馬だけはどうしても欲しくて、いつもと違う場所(左手)に隠れて競っていたのですが・・・500万円を超えたあたりから相手が10万円単位で入れ出したので、「これは行ける」と確信。間髪を入れずに畳みかけて税抜き590万円で落札。やった!!
更に、この馬を買った後、ナルカミがジャパンダートクラシックJpnIを制した事などもあり、募集前から問い合わせが殺到。一挙に満口となりました。
当クラブでは毎年3歳ダート三冠への出走馬を出していますが、本馬も早期デビューから活躍の暁にはJBC2歳優駿、そして3歳ダート三冠路線を目指していきたいですね。

ファイヤーアラームの2024
本馬の父シニスターミニスターは2023・2024のダートチャンピオンサイアー。これまでにヤマニンアンプリメ(JBCレディスクラシック)、テーオーケインズ(帝王賞、チャンピオンズC、JBCクラシック)、ドライスタウト(全日本2歳優駿)、キングスソード(JBCクラシック)、ミックファイア(ジャパンダートダービー)と5頭のGI/JpnI馬を輩出。これらを含めて計14頭のダートグレード勝ち馬、36頭の地方重賞勝ち馬を輩出しており、重賞勝ちは地方・中央を合わせて100勝以上を挙げています。
名実と共にダートNo.1種牡馬である同父の産駒は当クラブとも相性が良く、ブリーダーズGJCと北斗盃を制し重賞2勝、JBC2歳優駿JpnIIIではフォーエバーヤングの3着に入ったブラックバトラーを輩出。他にもフレッシュチャレンジを勝ったポップディーヴァ、ネクストスター金沢3着のスペリオルパンサー、大井で新馬勝ちを含む2勝のハッピーゲート等を出しており、ほぼハズレなし。毎年ラインナップに加えたいところですが、現在種付料が800万円まで高騰し、近年は高齢となり種付数を減らしている事から地方オーナーズには敷居が非常に高く、終に昨年は一頭も募集する事が出来ませんでした。代わりにインカンテーションの産駒の募集を始めましたが、全くの不人気で困っていたところ。
本馬は事前に生産者に話を聞いたところセレクションの時は風邪で体調が悪く馬体が寂しく映ったことから主取りになったとの事で、レポジトリ等は全く問題ないとの事でした。確かにやや小柄ではありますがセレクションセールの厳しい馬体審査に合格している事から馬体の良さも光ります。
この後のオータムセールには一頭も上々馬がおらず、1歳セリに出てくるのは本馬がラストチャンス。先生にいくらぐらいだったら買えると思う?って聞いたら、700万円ぐらいはするんじゃない?と。種付料が800万円だったので、それでもそれ以下だなと思い、そのくらいまでは頑張ってみようと思っていましたが、何と予算よりだいぶ安く落札する事が出来ました。やった!!
後から聞いたら最後までしつこく競って来たのは仲良しのXでおなじみWinning Horse Clubの楊さんで、「会田さんだと知っていれば深追いしなかったのに~」と、今回ばかりは隠れて競っていたのが裏目に。「700万円まで行くつもりだった」と話したら非常にがっかりしていましたが、ユーロンのマネージャーをしていて世界中を飛び回っている楊さんが見ていた馬なら間違いないでしょう。本馬は小柄なのでヤスナカファームで昼夜放牧をしてしっかりと身体を作ってから、厩舎で馴致をしてもらおうと思います。
さすがに現在募集しているインカンテーション産駒の牝馬(ムットクルフェの半妹)より安く出来ないので少し値段はつけさせて頂きましたが、予算が合えばぜひご検討頂ければと思います。

その他、今回のセリもサマーに引き続き「ベラジオ」の林田さんに酒席にも誘って頂き、楽しい時間を過ごす事が出来ました(やらかしたのは内緒です・笑)。
セプテンバーセールの取引馬には30万円の市場取引賞もつき、当クラブでは共有の皆様に分配しています。
早割の残り時間も少ないですが、ぜひご検討を宜しくお願いいたします。



