【コラム】HBAサマーセール2024レポート(中編)
こんにちは、代表の会田です。
中々執筆する時間が取れず、大変遅くなりましたが、恒例のコラムの第二弾をお届けいたします。
さて、今年の選馬の方針についてです。
地方競馬のプライド
近年、サウジCやドバイワールドCなどの高額賞金レースを日本の馬が当たり前のように勝つようになり、
ダート三冠も創設され、地方競馬の馬主会購買なども活発になって来た事から、
ダート馬の需要が高まって年々、馬代金が高騰しています。
ただ、中央と同じレベルの馬を地方競馬に入厩させて打倒中央を目指しても面白くありませんから
当クラブでは募集価格を1千万円以内に収める事を一つの目安にしていて、
それを考慮するとセリではだいたい700万円台くらいで収めたいところなのですが、
近年血統も馬体も良い馬を選ぶと到底その価格では収まらなくなってしまいました。
そこで、一昨年の募集では馬体や血統は良いけどセリの段階で既に骨片が飛んでいたり、
ボーンシストがあると言われた馬などを信頼している獣医師の瀬瀬先生に判断を仰いでワケアリの馬ばかりを購買しましたが、
その中からブラックバトラー(重賞2勝,JBC2歳優駿3着)やスペリオルパンサー(ネクストスター金沢3着)が出て一定の成功を収めました。
中でもブラックバトラーのJBC2歳優駿は1着のフォーエバーヤングがセレクトセールで1億780万円、
2着のサンライズジパングは同セールで7040万円の高額取引馬でしたが
取引価格770万円のバトラーも出遅れがなければ勝っていたかもと言う物凄い差し脚で3着になって大変話題になり、
勝つ事は出来ませんでしたが、取引価格が1桁違うワケアリの馬で中央勢を差し置いて話題になる
「地方競馬のプライド」を示す事が出来たと言えるのではないでしょうか。
レポジトリや悪癖は気にし過ぎない
という事で今まで悪癖がある馬やレポジトリを見てちょっと悪いところがあるような馬は敬遠していたのですが、
馬格もあって血統も良くて、レポジトリも綺麗という誰が見ても良い馬はどうしても高くなってしまう。
一昨年の結果を見て、昨年のセリでも馬や血統ははいいけどOCDに影がある馬や開腹手術をした馬など
ワケアリの馬ばかりを集めたところ結果的に何もないどころか1歳セリで購入した8頭全てがデビューして既に7頭が勝ち上がり。
この結果を見て先生は遂に「坂路があればノドナリの馬以外は何とかなる!」とまで言い出しました。(本当か!?)
なので悪癖やレントゲン等で嫌われるならチャンスと思い、レポジトリは喉だけはしっかり見て、
血統や実馬の馬体や歩様を重視し選ぶことにしました。
良い馬をより安く提供
一昨年の募集は4頭でしたが、昨年は12頭に一挙増加し、
田中淳司厩舎に入りきれなかった馬は他の厩舎にもお手伝い頂きました。
その中でセプテンバーセールで165万円で落札のステイクラッシー(岩手)が新馬戦優勝から、重賞3着、
その後JRA上級認定競走であるフューチャーステップを優勝。
サラブレッドオークションで同じく165万円で落札のキングオブワールドは未勝利勝ちのみですが
8戦して掲示板を外したのは2度のみと、安価な馬でも一定の成功を収めたので、
これまで既走馬オーナーズのみで楽しまれている方や資格維持目的の方など、
今までとは違う層のオーナーにも当クラブのマネジメントを体験して頂いて大変喜んで頂き、
次の馬への出資して頂いたりと、勝つ事による好循環を作り出せています。
補助金の縛りでいくら以上の馬を買わなければいけないとか、決められた予算がある訳ではないのが我々の強み。
6日間ずっとセリに張り付いていればこういった掘り出し物を見つける事が出来るので、
王道路線を歩む馬ばかりではなく、わけありの馬や、ステイクラッシーのように馬体は血統はいいけど小さい馬など、
安くてもいい馬がいれば積極的に購買していく事にしました。
人と違う事をするのが成功への近道
私は再上場や、一声落札で馬を買う事が多いのですが、よく人に「誰も競る人がいないと不安にならないか」と聞かれます。
確かに誰にも評価されていないという事なのでそれはそうなのですが、
セリと言うのは、欲しい人が複数人いればその馬本来の適正価格を超えて、際限なく価格が上昇していきます。
例えば、昨年のセリでは、ミックファイアやキングスソード等の活躍でシニスターミニスターが大人気を博しましたが、
今の3歳ダート三冠路線では当クラブのブラックバトラーが不来方賞で5着に入ったぐらいで特に目立った馬は出ていませんよね。
当時は「シニスターを買えば何でも走る」みたいな風潮でしたが、必ずしもトレンドが長く続く訳ではないのです。
ビジネスの世界では、人と違う事をするのが成功への近道ですが、たぶん馬の世界でも同じ。
今年のセリではダノンレジェンド産駒が大変な人気になると思いますが、みんな気づいた時にはもう適正価格では無くなっているので、
あまり大衆のニーズに迎合し過ぎず、もっと違う種牡馬の産駒から良い馬を探したいと思います。
以上、前置きが長くなりましたが、次(後編)はセリの実録レポートをお届けします。