【コラム】HBAサマーセール2023レポート(前編)

こんにちは、代表の会田です。

昨日、2023年度募集馬4頭を発表させて頂きましたが、毎年恒例のサマーセールに参戦して、どういう経緯で募集馬を落札したかを記したレポートをお届けします。

今年の選馬の方針

さて、昨年の記事を見て頂ければ分かると思うのですが、サマーセールは年々「隙の無いセリ」になって来ています。

例年であれば、例えば中央の先生が追い切りや投票などで忙しい木金や、天気の悪い日、上場番号の後ろの方のみんな帰ってしまう時間帯の馬が安かったりとかして敢えてそういう馬を狙ったりしていたのですが、みんな少しでも安く馬を買おうとして同じような事を考えている人が増えたからなのか、オンラインが導入されて時間的制約が無くなったからなのかは定かではありませんが、いわゆる「凪の時間帯」が少なくなって来たなと思いました。

また、馬主会購買も活発になり、特に資金力のある大井の馬主会購買と被ってしまうと僕の予算では一発で退場となってしまいます。

なので、今年は大井の馬主会購買の対象外であるセプテンバーセール以降のセリを中心に仕入れを考えて、サマーセールは昨年のスペリオルパンサーやブラックバトラーみたいな人気の種牡馬の訳ありの馬が安く買えれば落とそうかなくらいの心構えで行く事にしました。

ただ、シニスターミニスター産駒はもう絶対買えないなと思いましたが(笑)

初日

前日の夜に北海道入りし、新千歳空港温泉に宿泊し、朝一のレンタカーで静内の北海道市場に向かいました。

一斉展示の3クール目くらいの時刻に到着したのですが、この週の北海道は連日真夏日を記録する異常気象で、会場はとにかく暑い。

日光に体力を奪われ、全部回って見るだけで汗びっしょりで疲れ果ててしまい、会場もクーラーが効いていないので蒸し暑く息苦しくて発汗が止まりません。

終いには夏バテと思われる頭痛や熱っぽい症状が出始めて、セリが終わったのは20時半。僕はそれより少し前に帰りましたが、朝8時半から馬を見始めて暑い中12時間も出ずっぱりでは地獄というか、売る方も買う方もたまったもんじゃありません。

ちなみにこの日せりに参加した中で気になったのはやはりブラックバトラーの半弟の35番のアズマガールの22(父エスポワールシチー)。
「狙ってるんですか?」と何人もの南関の調教師に聞かれましたが、欲しい人が2人以上いれば際限無く高くなってしまうのがセリですから、募集価格で1千万を超えるような値段、具体的には700万円以上になるならきっぱり諦めようと最初から思っていました。そしたら東京都馬主会が来て案の定高くなってしまい1540万円。これはちょっとうちの予算では無理ですが、ブラックバトラーの活躍で値段が評価されたと思うとそれはそれで誇らしく思います。

あとは95番のカナリの2022(父ホッコータルマエ)も欲しかった一頭です。馬っ気がひどく、周回展示中も人に乗りかかったり気性的にかなり難がありそうだったので恐らく厩舎スタッフの怪我などを考慮して先生に競っている最中に「やめてくれ~」と止められたのですが、山口ステーブルさんが落札していましたので、あそこなら適材適所というか、きっと上手く育成出来るでしょう。

その後、255番のマリスステラの2022(父フォーウィールドライブ)のせりに参加し、落とせなかったところで会場を後にしました。

体調が悪かったので宿泊先の富川に帰った後の先生や馬主仲間との飲み会ではお酒を飲まず食事だけしてやり過ごし、帰ったのは22時半くらい。これで翌朝8時半からの一斉展示に行くのは絶対無理というかこのままでは5日間身体が持たないので、今日はゆっくり休んで明日以降は正午のセリ開始前に会場へ行き、先生がピックアップした馬や気になる馬だけを厩舎へ行って出して見て回る事にしました。

*2日目

前日に宣言した通り、一斉展示はパスして12時前に会場へ到着。ゆっくり休んだので、この日は体調は少し持ち直しました。この日から場内各所にサーキュレーターが配備されていて、少しは風通しが良くなりました(それでも暑いには変わりないですが)。また、前日までは共有馬主さんや調教師に挨拶される事もたくさんあるかなと思い襟付きシャツとチノパンを履いていたのですが、もうそういう世間体は無視してTシャツと寝巻用に持って行った短パンとサンダルで会場入りしました。

この日は先生がチェックした馬を周回展示で見ていたのですが、その中で312番のローマンビューティの2022(父ダノンレジェンド)をオススメされて、スペシャルエックスやストリームで重賞を勝っている先生が「自厩舎で活躍しているダノンレジェンド産駒に姿形が似ている」と評していました。

ダノンレジェンドは門別と相性が良くて、前月にもサッポロクラシックCを勝ったばかりなんですよね。

競らずに様子を見ていると、誰からも声が掛からず500万円で主取に。

気になって先生と厩舎に話を聞きに行くと、生産者の方が「1人お台”400万円で取ってくれないか”と具体的な相談をして来た馬主さんがいたんだけど来なかったね」「暑さのせいか、セリに向けていくストレスのせいか、少し身体を減らしてしまっていたので評価して頂けなかったのかなあ」とおっしゃってました。

セリの写真と、僕が撮って来た動画を見比べてもらうと分かるのですが、確かにせりに向けて食わせ込まないといけない時期なのに、うっすらとあばらが浮いているんですね。
写真が良い馬で、腰高で、母馬は500kgぐらいで競馬していた馬なので2ヵ月くらい放牧させて身体を作ってから馴致させれば、初仔は大きくなりにくいという事を差し引いても最低でも450~470kgくらいで競馬出来るのではないかという感じがしました。

母馬はローマンエンパイア産駒とやや地味ですが、500kgくらいで競馬していた大型馬で、生産者の中島牧場さんは「大きな活躍馬は出ないが、堅実に走る子を出す系統」と話しており、ローマンエンパイア産駒の成績や母系のブラックタイプを調べてみると、確かに健康でたくさん走ってくれる子が多い。地方競馬において、これはかなり重要なポイントですよね。

生産者の方の話を聞いた上で気に入ったので再上場をお願いすると、他にも1人見に来られた方がいるということで、再上場をかけても競り合いになるかなと思ったのですが、無事に一声の400万円で落札する事が出来ました。

本当に偶然なのですが、このサマーセール後にダノンレジェンド産駒が2歳重賞戦線を席巻し、
8/29にダヴァンティが石川テレビ杯(金沢)を、9/3にトゥールリーが九州ジュニアチャンピオン(佐賀)を、9/6にアメリアハートがフローラルC(門別)を、そして翌9/7にはトラジロウがイノセントC(門別)を制し、既に世代6頭もの重賞勝ち馬を輩出して一気にブレイクしました。

2歳サイヤーランキングでは2位につけており、セプテンバーセール以降のせりではとてもこんな値段で買う事は出来ないと思うので、我ながらかなり良い買い物をする事が出来たと思っています。

これから初期馴致まで2ヵ月ほど昼夜放牧で身体を作ってから門別の坂路でじっくりと鍛えていって、来年のネクストスター門別や、3歳限定戦となった北海道スプリントCでの活躍を目指せるような馬になってくれる事を期待したいですね。

後編へ続く。