【コラム】HBAサマーセール2025レポート(前編)

こんにちは、代表の会田です。

先週より2025年サマーセール購買馬の申込受付を開始させて頂きましたが、既に満口馬も出るなどたくさんのお申込を頂いており、誠にありがとうございます。

本コラムは募集開始前にアップしようと思っていたのですが、募集や次のセプテンバーセールの準備で中々執筆する時間が取れませんでした。

今回は前編・中編・後編3回に分けて、前編では今年の募集方針について、中編以降ではではセリの実録レポートをお届けしようと思います。

今年の募集について

さて、今年の募集についてですが、本当は昨年と同じくセプテンバー前に募集して、サマーの募集馬の売れ行きを見ながらセプテンバー以降のセリで何頭追加する決めようと思ったのですが、今年は例年と違ってサマーセールとセプテンバーセールの間隔が中3週しかありません。

9/2(火)が代金の決済期限および購買馬の無料預託期間なので、前日までに決済して、だいたいこの日に移動するのですが、昨年のオータムセールから会場内での商業目的の撮影が禁止されてしまいました。したがって会場で撮影した宣材を提供する訳にはいかず、移動後にカメラマンさんに募集馬の撮影に入ってもらうとなると、9/15(月・祝)からのセプテンバーの前に募集するのは大変忙しく、私としても次のセリに向けての下準備の時間が取れなくなってしまいますので、意を決して今年の募集はセプテンバー後にする事にしました。

ですので今年はセプテンバーで当クラブが何を買ったか見た後で出資を決めて頂けます。例年はサマーセール購買馬の売れ行きを見てから予算立てをして追加する頭数を検討していたので、「全然売れなかったらどうしよう」とか「セプテンバーの馬を見て買い控えが起きないかな」など頭をよぎらなくもないのですが、今年の早期割引はセプテンバーの厩舎や価格が出る前に決めてくれた人への御礼としての位置づけとして実施する事にしました。ですので、セプテンバー購入馬の厩舎や価格が出るのは10月1日以降になりますので予めご承知おきください。

今年の選馬のテーマ

さて、当クラブは創設して既に6世代がデビューしており、ここのところ毎年重賞も勝っているので一見順風満帆そうに見えますが、ダートグレードではJpnI・JpnIIで5着、JpnIIIでは3着が最高で、クラブの目標である打倒中央には今一歩手が届いていません。

ただ、直近3年のNAR年度代表馬であるイグナイターやライトウォーリアはJRA出身であり、ダートグレードを勝つような地方生え抜き馬は毎年1頭いるかいないかくらいなので、ちょっと目標が高すぎるかもしれませんが、そろそろクラブの最大目標であるダートグレード勝ちを達成したい

その為には馬選びの段階から目標レースを明確にしていく必要があると思っています。

1.地方馬が一番勝ちやすいダートグレード競走は?

ダートグレード競走の中で、唯一地方馬がJRAと互角以上に戦えているレースがあります。それはずばり、エーデルワイス賞です。
1998年に創設されましたが、過去27回のうちJRA馬12勝に対して地方馬15勝(門別13勝 岩手・佐賀各1勝)と、地方馬の勝利が上回っています。

なぜ、地方馬の方が強いかと言うと、まず一つはキャリアの差が挙げられます。
この時期のJRA馬は極端にダート戦の数が少なく、だいたい新馬・未勝利勝ちの1勝のみで来ているのに対し、
門別馬はエーデルワイス賞を頂点とした牝馬重賞戦線が整備されているため、重賞競走を含め既に4~5戦のキャリアを積んでいる馬がほとんどです。

また、北海道までの輸送や、環境の変化におけるメンタル面も大きいと思います。
門別の馬は競馬場に厩舎があるためいつもの環境でレースを行いますが、JRAの馬は何日か前にフェリーを経由して本州から長時間輸送されて来て、
門別に滞在して追い切りを行い、更に未経験のナイターのレースに出る事になるので、特に環境の変化に弱い牝馬においては力を出し切るのが難しいでしょう。

これにはJBC2歳優駿にも上記と同じ事が言え、JRAと地方の対戦成績は前身の北海道2歳優駿を含めてJRA14勝、地方13勝とほぼイーブンですが、
今や日本の中距離の牡馬と言えば同競走を勝ったフォーエバーヤングを筆頭に世界レベルの馬が多く、
国内でも3歳ダート三冠なども創設されてニーズが高いので馬代金も高くなりがち。

一方短距離のダート牝馬は中央競馬では全くニーズが無く、価格的にもお値打ちになりそうなので、
もちろん例年同様ダート三冠路線を狙える王道路線の馬もラインナップに含めつつも、
今年はエーデルワイス賞を狙えそうな短距離の牝馬 このあたりを例年より強化していきたいと思っています。

2.ダートグレードを勝てる種牡馬は?

ダートグレードを勝つには、種牡馬選びも明確にしていく必要があります。

ダート系の種牡馬の中には、地方の重賞は勝てても中央やダートグレードでは一歩及ばないという種牡馬もいるでしょう。

具体的には、アジアエクスプレスやモーニン、ベストウォーリア、ダノンレジェンド、ホッコータルマエあたりは「地方御用達」的な種牡馬で
種付料に対するコストパフォーマンスが良く、地方重賞でも大活躍しているのでもちろんラインナップに加えるべきですが、
GIII~GIIでは勝つもののGI/JpnIには一歩手が届いていません。

やっぱり地方で走らせるには少し高すぎると感じるような、GI/JpnIや海外のレースでも結果を出している種牡馬の産駒も何頭かは導入しておきたいところ。

具体的にはシニスターミニスター、ヘニーヒューズ、マジェスティックウォリアーといったあたりですが、これらは元々の種付け料が高いため、牝馬なら何とか探してこれるかもしれませんが、牡馬だと良い馬だったら何千万円もしてしまうことがあります。

地方競馬は、見舞金などの手当の面や海外遠征時に使える施設等で中央に劣るため、高額馬を買っても入厩させるのにリスクがありますし、募集しても値段で敬遠されて恐らく買ってくれる人は少ないでしょう。

そのため、中央でデビューすべき血統レベルだけど、わけありで値段が付かなかった。

このような馬を積極的に導入して、地方競馬の凄腕の先生方の手で才能を開花させて打倒中央を目指していく。こういう筋書きが理想的と考えています。

3.地方競馬が中央競馬より優れているところ

このコラムを数年前からご愛読頂いている方は、わけありの馬を敢えて積極的に狙っている事はお分かりかと思いますが、

私は時に種付料以下の馬を買って来る事があるので、セリに来てレポジトリー等を一生懸命見ている馬主さんからは

「会田さんのオーナーズは訳ありの馬ばかり買って来て募集している」といったような陰口が聞こえて来ます。

それは事実なので言われるのも仕方ないのですが、結果を見てみてください。

現2歳までの6世代34頭中33頭がデビューして、デビュー出来なかったのは調教中の転倒事故で競走能力喪失となった1頭のみ。

また、現3歳世代までの勝ち上がり率は96%ワケアリの馬ばかり募集しているイメージとは裏腹に、どのクラブよりも安心して買って頂けると思います

ではなぜここまでの結果を残す事が出来るのか。それは具体的に話すと長くなるのですが、

やっぱり田中淳司先生を始めとする道営の先生方の育成力だと思っています。

ホッカイドウ競馬は4月~11月までしか開催がありませんが、オフシーズンは何しているかというと、1歳馬の育成を引き受けています。
中央競馬の調教師は、育成は外厩まかせで2歳の入厩からレースまでの仕上げに特化していますが、
道営の先生はオフシーズンの1歳馬の鞍付けから育成、シーズン中のレースに向けての仕上げまでをワンストップで行っています。

つまり他地区の先生と違って1歳馬が馬房を占有している関係上、翌年明け2歳馬デビューさせて賞金を稼がせないと自身の収入や成績に関わって来る事から、
仮に育成時点で何かあったとしても、それを把握した上で工夫した調教を施して何とか2歳のうちにデビューさせる。こういう技術に特に優れていると思います。

また、若駒はソエ等脚元のトラブルが起こる事が多いですが、特に脚元に負担の掛からない屋内坂路で育成出来るのは大きいです。
幸い軍師田中淳司先生はこれまでの成功経験から「坂路があればノド以外は何とでもなる」と言ってくれているので(本当か?)、
馬選びの面においてもレポジトリーを過度に気にし過ぎる事はなく、非常に心強いと言えるでしょう。

4.地方競馬のプライド

話は戻りますが、地方馬がダートグレードで地方の馬が中央の馬になかなか歯が立たない要因としては、

やはり元々入ってくる馬の質が大きいのではと考えています。

例えば当クラブのブラックバトラーが3着だった2023年のJBC2歳優駿は1着のフォーエバーヤングがセレクトセールで1億780万円、
2着のサンライズジパングは同セールで7040万円の高額取引馬でした。

しかし取引価格770万円のバトラーも10馬身以上の出遅れがなければ勝っていたかもと言う物凄い脚を繰り出して3着に大健闘。
勝つ事は出来ませんでしたが、取引価格が2桁違う馬達を相手に正に地方競馬のプライドを見せつける事が出来ました。

ただ、バトラーだってレポジトリーに難があって敬遠されていたからこの値段だったのであり
父シニスターミニスター、母父キングカメハメハで兄弟にJRA勝ち馬もいますからこの血統ならばまともなら2千万円くらいはしていたはずです。

繰り返しになりますがこういう中央にいてもおかしくない血統レベルの馬を安価で仕入れて提供し、地方競馬の凄腕の調教師の手で才能を開花させて活躍させる。

こういう筋書きで打倒中央を目指す事こそが、当クラブの理想と考えています。

重賞2勝・JBC2歳優駿3着のブラックバトラー

以上、次回からはセリでの実録レポートをお届けします。
何とか早割期間中には書き上げようと思っていますので、今しばらくお待ちください。