【コラム】HBAオータムセール2023レポート

オータムセールの雑感

まずはじめに、知っている人も多いと思いますが、オータムセールは初日と2日目で趣が異なり、
初日はセール初登場の馬が、2日目は、セレクトセールからセプテンバーセールまでの夏セリで
主取りになった馬が上場されます。

取引価格は夏セリの方が高く、最近では育成も早まって来ていて
良い育成場はどんどん馬房がいっぱいになっていくので
生産者的には夏セリで売りたいのは当たり前なのですが、
この初日には、夏セリの時期では見栄えがしない小柄で遅生まれの馬や、
何らかのアクシデントがあって夏セリに上場できなかった馬が出展されます。

そのため正直初心者には難しいセリなのですが、昨年当クラブのブラックバトラーを仕入れたセリでもあり、
どうして夏セリではなくオータムに回す事になったのかを生産者にしっかり確認して、
欠点を割り切って購買する事が出来ればバトラーのような安い掘り出し物的な馬を仕入れる事が出来るという事です。

育成と経費の話

それともう一つ、当クラブでは1歳12月請求分までの経費込みで募集しているのですが(社台さん方式)、
セリの時期が夏セリより遅いということはその分経費が掛からないため
サマーセールで買った馬より50万円ほど上乗せする経費を少なく提供出来る事になります。

それだと夏セリで買った馬より育成が遅れてしまうのでは?という懸念もありますが、
ホッカイドウ競馬では11月上旬のシーズンが終わった後現役馬と入れ替わりで1歳馬が入厩して
馴致すらしていない馬でも厩舎で馴致を行って年明けには進んでいる馬と一緒に集団調教に混ぜて行くので
育成の質や現時点の進度の違いはさほど問題にならないと考えています。

当クラブのオータムセール出身と言えば前述のブラックバトラーと、今年引退したラストヴィグラスですが、
それぞれ5月、6月の早期にデビューを果たしてどちらもセリ取引価格以上の賞金を稼いでいます。

オータム出身馬を嫌う人もいますが、肝心なのは馬の質で、オータム出身だからと言って割り引く必要は無いかなと思います。

初日

さて、今回は前日に北海道入りして、STウィンファームで募集中馬の様子をチェックしてから前日に静内に泊まり、
初日は気合いを入れて朝一の一斉展示から見て回りました。

朝一から回っていたので、若い番号の馬に欲しい馬が結構出て来たのですが、
いざ競りの時間になってみると岩手県馬主会の購買とかぶってしまいました。

岩手県馬主会の購買はオータム初日のみで、確か400万円以上の馬を買うと200万円の補助金でしたでしょうか。
私もかつて購買に参加した事がありますが、買えないと2年間購買出来ないペナルティが発生してしまうので
若い番号の馬で決めてしまいたい心理が働きます。

こちらは予算もさほどなく、セプテンバー同様良い馬を安く買えたら買うぐらいのスタンスだったので、岩手県馬主会が来てしまった馬にはことごとく敗れてしまいました。

その後、良い馬はこれまでの競りと同じようにしっかり高く、イマイチな馬は次々売れ残るような感じで
淡々と競りは進行して行きます。

セリも終盤に近付く頃、先生と開腹手術歴が嫌われて安ければ狙っていこうという話になっていた205番のセイユウスマイルの2022(父モーニン)の番になりました。

(上記の5:15:00あたりをご覧ください)

競りは200万からスタートしましたが、欲しい人が複数いたようなのでまずは手を上げず様子を見ようということになり。競りに参加しているのは2人で、熾烈なバトルを繰り広げて410万円まで上がりましたが、こちらは500万ぐらいまでは競るつもりだったので、「あれ、安くない?」とすかさず手を挙げたのですが、これまでセリに参加していなかったので気づいてもらえず410万円で決まってしまいそうになったので、「おーい!!」と鑑定台向かって大声で手を振ったらハンマーが落ちる寸前で420万円で取ってくれました。
結局、これまで競っていた2人はお互い予算がいっぱいいっぱいだったのか競ってくる事は無く、その一発で落とす事が出来ました。やった!!

大井の田中正人先生にその様子を見られていました。笑

この後、206番のパイロも狙っていたのですが、こちらの予算を上回る950万円まで上がってしまい、ノルマンディーファームの落札だったので、205番で決められて良かったなと思いました。

セイユウスマイルの22を改めて紹介

父モーニンは地方競馬の新種牡馬リーディングはもちろん、2歳全体のリーディング首位を快走する新進気鋭の種牡馬です。

門別の認定リーディング1位とホッカイドウ競馬との相性も抜群で、重賞も既にヨシノヒローインがフルールカップを、ミヤギヴァリアントが岩手の若駒賞を制しています。

母系を見てみると、北海道から岩手の留守杯日高賞を制したスマイルミュの半弟にあたる血統で、きょうだいには他にも西日本ダービー2着のフィールマイラヴ、高知7勝を含む計9勝のキズナビームなど堅実に活躍している馬が多く、セリ時のカタログには掲載されておりませんがキョウエイジョイが9月に中央未勝利戦を勝ち上がっています。

本馬は馬体・動き共に打倒中央を目指せるレベルにあり、とてもこの値段で買える馬ではないと思うのですが、やっぱり気になるのは開腹手術の影響がどうかという一点だけでしょう。
ただ、こちらのブログなんかに詳しく書いてあるのですが、開腹手術は術後数日~数か月で病状が悪化したり合併症で亡くなってしまうケースはあるものの、予後の良い馬に関しては競走能力にはほとんど影響ないというデータもあり、本馬の術歴は当歳時のものですから問題なしと考えて購買に至りました。

「競走馬 開腹手術」で検索すると色々なデータが出てくるので、気になる方は調べてもらって、ご納得してから出資して頂ければと思います。

母馬は短距離で活躍した馬ですが、きょうだいは距離の持つ馬も多く、上手く勝ち上がる事が出来た暁には各地のネクストスターはもちろん、三歳ダート三冠を目指せるような器になって欲しいと期待しています。

2日目

さて2日目ですが、もう昨日1頭買って予算的にはほとんど使ってしまっていたのと、前夜は日高のホテルが取れず千歳泊になってしまったので、この日は買わなくてもいいかなと思い、先生も僕が行かないから行くのやめようかなと言っていて。でもせっかく来たのでので会場で食事だけしようという事になり、午前中はホテルでデスクワークをして、昼前ぐらいに会場に向かいました。

先生は行くのやめようかなと言いつつ、結局朝一から会場にいたらしいのですが、「今日はやっぱり売れ残った馬だから全体的に落ちるけど、1頭だけ良い馬がいた」と。
でも、買っても昨日のモーニンがあるから預かってくれないんでしょ?と言ったら、セレクション主取りの馬で、昨日のモーニンに負けず劣らず良い馬だから見てくれ、今日はこれしかいない、レポジトリーも大丈夫と、既に色々チェックしていて買う気満々でした。笑

上場番号が早かったので、食事を終えた後パレードリングを周回している時に見て来たのですが、確かに間違いない感じの馬でした(この動画は、その時に撮ったものです)。

ただ、父のサンダースノーは現2歳が初年度産駒なのですが、まだいまいち走っていないのが気になって先生に聞いてみると、「うちにいた馬はフレッシュ勝ちをしているから悪い印象はない」とおっしゃっていて、後々調べたら日本で初めてサンダースノー産駒を勝たせたのは淳司先生でした(その時の記事はこちら)。そんな雑談をしているうちに、じっくり検討する暇もなくセリの時間になってしまいました。

上記動画の39:50あたりをご覧ください。

まあ、200万、300万とかだったら買おうかなと思って競りに参加したら、300万スタートであまり動きがなく、案外安く買えそうだなと思って手を挙げたらハンマー落ちる間際にビッドされたりとか結構しつこくて。先生が「あの上げ方だと相手は予算ないから間髪入れずに競り上げた方がいい!!」とか何とかコーチされつつ競り上げていったら、380万円(税込407万円)で落とす事が出来ました。

↑満面の笑みですがサンダースノーで売れるかな?という不安も。

ハーズシャドウ2022を改めて紹介

父のサンダースノーはドバイワールドカップ連覇した馬で、フランスのクリテリウム国際やジャンブラ賞など芝のGIを勝っています。
本馬は皐月賞馬キャプテントゥーレなど活躍馬を多数輩出しているあのスキーパラダイスのファミリーで、近親にユニコーンSを制したペリエールがいる血統です。また、カタログにはありませんが半妹のエコロレジーナも10/22にJRAで2勝目を挙げています。
本馬はセレクションセールを600万円で主取りになってオータムセールに出て来た馬なのですが、セレクションセールは申し込めば誰でも出品出来ると言うわけではなく、血統と馬体の審査に合格しなければ出品する事が出来ないんですね。
でもさすがセレクションセールの馬体審査に合格して来ただけあるなという印象で、馬体・動き共に申し分のないデキでした。
上記の立ち写真を見るだけでいかにも走りそうなフォルムが見て取れますよね。

外観は母父オルフェーヴルの影響が出ていて瓜二つですが、やや体高が低く幅があるところあたり、どちらかと言うと短距離志向の馬体に映ります。道営はエーデルワイス賞を頂点とした短距離の牝馬重賞が豊富ですから、上手く活躍させる事が出来ればグランダムやネクストスターと言った路線も狙いつつ、上述のワールドワイドな血統背景から一度JRA北海道シリーズや盛岡の芝重賞でも見てみたくなる・・・そんな素材です。

上記のように血統も素晴らしく、動きも抜群なので自信を持ってお薦め出来る馬ですが、サンダースノーという種牡馬が現時点ではまだ活躍していないので、それが皆様に刺さってくれるかどうか?この一点に尽きるでしょう。逆に言えば、最低販売価格が600万円のセレクションセールに出ていた馬をこの値段で買える、という事を考えればかなりお買い得かなと思います。

厩舎の振り分け

さすがにもう予算オーバーなので、もう仕入れは打ち止めにして明るいうちに厚賀の牧場で昨日購買したセイユウスマイルの22を見てから帰る事に。

その前に、先生があと1頭しか預かれないというのでどっちかを以前マックスレジェンドで重賞を勝ってもらった事のある川島洋人先生にお願いしようという事になり、
淳司先生に「昨日のモーニンと今日のサンダースノーどっちやりますか?」って聞いたら、
「どっちも良い馬だから、僕はどっちでもいい。川島君に決めさせよう」ということで、川島洋人先生を呼び出して三者面談。
川島先生は「うちは今年は牡馬が少ないので、牡馬をやりたいなあ」という事になって、
セイユウスマイルの22が川島洋人厩舎へ、ハーズシャドウの22は田中淳司厩舎からデビューする事になりました。

川島洋人先生の紹介

川島洋人先生は、当クラブで初登場なので改めてご紹介させて頂くと、
元ホッカイドウ競馬の騎手で、ヤマノブリザードという馬でJRAのクローバー賞や函館2歳Sを制した事もあります。
ヤマノブリザードは、中央移籍後朝日杯FS2着でクラシック三冠を皆勤したので(タニノギムレットの世代)、覚えているファンもいるのではないでしょうか。

調教師としては、中央競馬で活躍している馬をたくさん輩出していて、
有名どころでは今もダートグレードで活躍しているリュウノユキナも川島厩舎所属でした。
JRAのすずらん賞を勝った時はまだ道営在籍時で、打倒中央も果たしています。

他にも道営在籍時に重賞を3勝したサザンヴィグラスは中央に移籍してから3勝クラスのBSイレブン賞も勝ち、
フローラルCを勝ったブルーカルセドニーも中央移籍後2勝して3勝クラスまで出世と、2歳馬の育成力には定評があります。

私名義の馬でもマックスレジェンドで盛岡重賞の知床賞を勝ってもらっており相性抜群で、
きっと田中淳司厩舎募集の馬に負けない活躍をしてくれると思います。

馬の左にいるのが川島先生

募集は10/30(月)の正午から!!

…と言う訳で情報は出し尽くしたので後は10/30(月)の正午より募集開始を待つばかりです。

最近、オーナーズクラブも増えて来ておりますが、当クラブは田中淳司厩舎の育成力と私自身の地方馬で海外まで行った馬主としての経験で他のクラブには無い強みがある、と自負しています。

皆様のご購買、お待ちしておりますので宜しくお願いいたします。